日本におけるギャンブル 依存症の統計|ギャンブル依存症に対する予防と対策

令和2年度のギャンブル依存症の調査研究によれば、日本で過去1年間にギャンブル依存症の疑いがある人は、成人全体で約2.2%という結果が出ています。

日本では近年、賭け事にはまってしまいやめることができない、「ギャンブル依存症」が増えています。日本は特にギャンブル依存の人数が諸外国と比べて多く、その問題がますます深刻化しているのが現状です。

当記事では、日本でのギャンブル依存症の程度を分析し、その対策や対応策なども解説していきます。

日本におけるギャンブル 依存症の統計|ギャンブル依存症に対する予防と対策

ギャンブル依存症って?その原因は?

ギャンブル依存症とは一体何なのでしょうか?ギャンブル依存症とは、ギャンブルをやめたくてもやめられず、本人や周りの人たちの生活に大きな支障をきたす、精神疾患の一つです。

ギャンブル依存症の特徴を見てみましょう。

  • 借金をする
  • 仕事や学校を休む
  • 周囲との関係が悪くなる
  • 睡眠や食事がおろそかになる

ギャンブル依存症の診断基準としてよく用いられるものが、DSM-5(アメリカ精神医学会による『精神疾患の診断と統計マニュアル 第5版 』)です。

DSM はギャンブル依存症の他、様々な精神疾患を診断するのにもよく使われます。

DSM-5 では、以下の2つがあてはまるとギャンブル障害と判定されます。

  1. ギャンブル依存症の特徴の9項目のうち、4つ以上当てはまる(基準A)
  2. その賭博行為が躁病エピソードではうまく説明されない(基準B)

基準Bは簡単に言うと、躁状態のときにだけギャンブルにハマりこむ場合、躁や躁うつが問題だと考えられるため、障害の診断がつかないということです。

ギャンブル依存症にみられる特徴9つをあげていきます。

表1:DSM-5 によるギャンブル障害の診断基準;

A.臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る持続的かつ反復性の問題賭博行為で、その人が過去12カ月間に以下のうち4つ(またはそれ以上)を示している。

  1. 興奮を得たいがために、掛け金の額を増やし賭博をする欲求
  2.  賭博をするのを中断したり、または中止したりすると落ち着かなくなる。またはいらだつ
  3. 賭博をするのを制限する、減らす、または中止したりするなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある
  4. しばしば賭博に心を奪われている(例: 過去の賭博体験を再体験すること、ハンディをつけること、または次の賭けの計画を立てること、賭博をするための金銭を得る方法を考えること、を絶えず考えている
  5. 苦痛の気分(例: 無気力、罪悪感、不安、抑うつ)のときに、賭博をすることが多い
  6.  賭博で金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を“深追いする”)
  7. 賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつく
  8.  賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある。
  9. 賭博によって起きたシビアな経済問題から免れるため、他の人に金を出してくれるように頼む。

B.その賭博行為は、躁病エピソードではうまく説明されない。

ギャンブル障害の程度は、

  • 軽度: 4〜5 項目の基準に当てはまる
  • 中等度: 6〜7 項目の基準に当てはまる
  • 重度: 8〜9 項目の基準に当てはまる
読者のために!

(日本精神学会監修,高橋三郎・大野 裕監訳,染矢俊幸・神庭重信・尾崎紀夫,三
村 將,村井俊哉翻訳.DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引.東京: 医学書院,
2014.を基に作成)

引用:中外医学社「ギャンブル依存症とは?」

ギャンブル依存症は複数の要因が重なって発症します。そのため、一概にこれが原因だと言い切れるものではありません。

ただし、発症リスクを高める要素はいくつかあるのです。

  • 子供時代にギャンブルをしたことがある
  • 家庭環境や遺伝(親がギャンブル依存症など)
  • 精神疾患を患っている(抑うつや不安、強迫性障害、双極性障害、ADHD、薬物やアルコールなどの物質乱用など)
  • ギャンブルを始めた初期に大儲けをした経験がある、ギャンブルにアクセスしやすいなどの環境
吉田碧麻
吉田碧麻

上記に当てはまる人が必ずギャンブル依存症になるとは限りませんが、ギャンブル中毒になる可能性は高くなるでしょう。

日本におけるギャンブル依存症の国内統計

日本はギャンブル大国とも言われています。日本でのギャンブル依存症の実態を具体的な数字で見ていきましょう。

図表1:過去1年でギャンブル依存が疑われる人の人数(SOGS 5点以上)[年齢調整後]

SOGS5 意味の説明 男性 女性 男女合計

SOGS5点未満

人数 3,842人 3,967人

7,809人

割合 96.3% 99.3%

97.9%

SOGS5点以上

(ギャンブル依存症が疑われる者)

人数 149.3人 26.2人 175.6人
割合

(95%信頼区間)

3.7%

(3.2~4.4%)

0.7%

(0.4%~1.0%)

2.2%

(1.9~2.5%)

全体

合計人数 3,991人 3,994人

7,985人

引用:久里浜医療センター「国内のギャンブル等依存に関する疫学調査 」

図表2過去1年間で最もお金を使ったギャンブルの種類(SOGS5点以上の者)

ギャンブル種 男性 女性 男女合計
パチンコ 45 (34.6%) 15 (60.0%)

60(38.7%)

パチスロ

46 (35.4%) 4 (16.0%) 50 (32.3%)
競馬 16 (12.3%) 1 (4.0%)

17 (11.0%)

宝くじ(ロト・ナンバーズ等も含む)

7 (5.4%) 4 (16.0%) 11 (7.1%)
その他 16 (12.3%) 1 (4.0%)

17 (11.0%)

全体

130 (100%) 25 (100%)

155 (100%)

※その他は、競輪、競艇、オートレース、サッカーくじ、証券の信用取引、先物取引市場への投資、FX、公営ギャンブルを除くインターネットを使ったギャンブル、海外のカジノなど。

【注】

SOGS(South Oaks Gambling Screen):アメリカのサウスオークス財団が開発した病的ギャンブラーを検出するための自記式スクリーニングテスト。ギャンブル障害に関する国内外の疫学調査で数多く採用されている。得点範囲は0点〜20点で、本調査は合計 5点以上の者を「ギャンブル等依存が疑われる者」とした。

年齢調整全人口における年齢構成と、本調査の回答者における年齢構成の差異の影響を取り除くため、令和元年10月1日現在人口を基準人口として補正。

95%信頼区間:同じ調査を100回実施した場合、95回はその区間内に真の値が含まれることを意味する。

まず図表1を見てください。ギャンブル依存症は175.6人で、全体の2.2%という数字が出ています。また、ギャンブル依存症の割合は、女性(0.7%)よりも男性(3.7%)方が多いことが判明しました。男性のほうがハマってしまう率が高い、ということです。

ではどのギャンブルが一番ハマりやすいか、図表2をご覧ください。トップはパチンコ(男性34.6%、女性60%)という結果です。

パチンコに続き2番目はパチスロ。女性(16%)に比べ男性(35.4%)の数が目立ちます。

パチンコやスロットのような電子ゲームは、そのマシン自体に依存させる要因があります。

吉田碧麻
吉田碧麻

たとえば、あともう少しで当たるという場面では、脳内の高揚感を感じる部位(報酬系)の働きが活発になり、もっとギャンブルを続けたいと思わせるのです。

さらに、パチンコ台やスロット台のにぎやかなサウンドや画像も、脳を興奮状態にさせ、戦闘意識を高める働きがあります。派手な演出やワクワク感が高まる音で、負けていてもまるで勝っているような錯覚をおこさせるのです。

ギャンブル依存症の人口統計分布

次に、統計をもとにギャンブル依存症の性別分布や年齢分布について更に詳しく見ていきます。

図表1:過去1年におけるギャンブル等依存が疑われる者(SOGS 5点以上)の割合[年齢調整後]

SOGS5 意味の説明 男性 女性 男女合計
SOGS5点未満 人数 3,842人 3,967人

7,809人

割合

96.3% 99.3%

97.9%

SOGS5点以上

(ギャンブル依存症が疑われる者)

人数 149.3人 26.2人 175.6人
割合

(95%信頼区間)

3.7%

(3.2~4.4%)

0.7%

(0.4%~1.0%)

2.2%

(1.9~2.5%)

全体 合計人数 3,991人 3,994人

7,985人

引用:久里浜医療センター「国内のギャンブル等依存に関する疫学調査 」

年齢調整全人口における年齢構成と、本調査の回答者における年齢構成の差異の影響を取り除くため、令和元年10月1日現在人口を基準人口として補正。

95%信頼区間:同じ調査を100回実施した場合、95回はその区間内に真の値が含まれることを意味する。

上記の調査結果によると、ギャンブル等依存が疑われる者(SOGS 5点以上)は、全体のギャンブル人口の175.6人(約2.2%、95%信頼区間:1.9~2.5%)です。

これに対して、成人男性は149.3人(約3.7%、95%信頼区間:3.2~4.4%)、成人女性は26.2人(約0.7%、95%信頼区間:0.4~1.0%)という結果が出ています。

図表2:娯楽と健康に関する調査(回答者の性別・年齢)

娯楽と健康に関する調査(回答者の性別・年齢)

引用:久里浜医療センター「令和2年度 依存症に関する調査研究事業|ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」

また、娯楽と健康に関する調査では、ギャンブル年齢の全体を通して40代、50代、60代に回答が集中しています。

性別で見ると、一番多いのは、男性は60歳~69歳、女性は40歳~49歳です。また、全体を通して、男性40代~60代なのに対し、女性は30代~60代とより広い範囲に集中しています。

この調査では、ギャンブル中毒が疑われる人(SOGS 5点以上)のさらに細かな年齢については公開されていません。

読者のために!

日本の厚生労働省の公式文書では、満18歳以上75歳未満の、成人人口全体が調査の対象となっています。

政府と公的機関の対応

2016年12月に「特定複合観光施設(IR)整備法」が公布・施行されました。“IR”とは、Integrated Resort(統合されたリゾート)の略です。これは、カジノだけでなく、国際会議場やショッピング、レストランなどを一体的に整備した大型リゾート施設のことです。これにより、経済への良い影響と地域の活性化などのメリットが期待されます。と同時に、一方でギャンブル依存症患者の増加という心配の声もあります。この新しい法案で、ギャンブル依存症という社会問題がますます注目されてきています。

これに対し日本政府はギャンブル依存症予防として、次の対策を講じています。

  • ギャンブルへのアクセス限定(IR区域数の制限、施設の制限等)
  • 誘客時の規制(広告勧誘規制、カジノ行為関連景品類の規制)
  • 厳格な入場規制(入場等の回数制限、厳格な本人確認、入場料の賦課等)
  • カジノ施設内での規制(本人・家族の申出による利用制限措置等)

IRの区域数を最大3ヶ所に限定し、カジノ施設の数は各IRにつき1施設に制限することで、ギャンブルに触れる機会を限定しました。また、カジノ施設の面積をIR全体の3%とすることで、利用者を制限しています。

さらに日本人に対して、入場規制として7日間で3回、28日間で10回とルールを設けています。入場料を1回6,000円にすることでも、日本人の利用者を制限しています。

その他、カジノ施設内でのATMの設置禁止やチップ交換時の支払い手段の限定、クレジットカードの利用規制など、様々な規制を講じています。

また、ギャンブル依存症の支援に関して、以下のようなアプローチも展開されています。

  • ギャンブル等依存症の予防に関する事業の実施
  • 医療提供体制
  • 相談支援
  • 社会復帰の支援
  • 民間団体の活動に対する支援
  • 連携協力体制
  • 全国的な啓発キャンペーン

図表1:治療プログラムの効果(断ギャンブルの継続率)

ギャンブル 依存 症 人数

引用:厚生労働省保険局医療課「令和2年度診療報酬改定の概要(精神医療)」

吉田碧麻
吉田碧麻

なお、自身の力では止められないギャンブルも、各医療機関の治療プログラムによって適切な治療を受けることで、6か月後には42.6%の依存症患者がギャンブルを断つことができます。

ギャンブル依存症との闘い: 予防と対応策

では、ギャンブル依存症にならないようにするにはどうすればよいでしょうか?また、ギャンブル依存症と戦うため、何ができるでしょうか?

ギャンブル依存症になる可能性は誰でもある、ということを頭に入れておきましょう。自分や家族、友達を依存症の危険から守るため、それぞれ個人が普段から十分気を付ける必要があります。どのように責任あるギャンブルができるか、十分に理解しておくことが何より大切です。

責任あるプレイとは、ギャンブルの安全性と自己管理を目的とした概念です。ギャンブルに潜むリスクを認識し、やめられなくなってしまう『依存』状態に陥ることのないよう、娯楽の一形態であり続けるための取り組みです。

例えば、ギャンブルに費やすお金や時間などに制限を設けて、それぞれ個人が自己管理に徹底しましょう。また、周りに気になる人がいれば、治療のオプションや支援サービスなどのサポートをすすめることができます。もし、自分が、または身近な人がギャンブル依存症なのでは・・と気になる際は、早めの相談を心がけてください。ギャンブル依存症は、早めの対応が回復への近道です!

以下の支援サービスが利用できます。

  • カウンセラーによる電話相談サポート
  • 面談カウンセリング
  • 医療機関の案内
  • 法テラスや弁護士会等の案内
  • 自助グループの案内
  • 精神保健福祉センターへの案内

日本で利用可能な治療の選択肢は、心理療法、薬物療法、作業療法、生活環境調整など、様々なものがあります。また、どうしても自分でコントロールするのが難しいという人は、ギャンブルから強制的に距離を置くために入院できる医療機関もあります。

吉田碧麻
吉田碧麻

ギャンブル依存症は、人間関係の悪化、借金地獄、家庭崩壊を招きかねない、実に深刻な心の病気なのです。

ギャンブル依存症の要因は様々です。実際単発的な研究では、この原因をつきとめるのは困難なのです。この分野では時間をかけた縦断的な研究が必要です。しかしながら、今のところ長期的な視点での研究が不足しています。発症から進行、そして回復までの全ステップを調査していくことが求められます。長時間のスケールで調査することで、依存症に対してより効果的なアプローチが期待できるでしょう。

まとめ

この調査結果において、ギャンブル等依存が疑われる者(SOGS 5点以上)は、全体の成人人口の約2.2%(男性3.7%、女性0.7%)であることが分かりました。

ギャンブル中毒の疑いが少しでもある場合は、いちはやく依存症サポートセンターや医療機関に相談しましょう。克服への最初の一歩を踏み出すことが何より肝心です。

一番大切なのは、責任あるギャンブルを取り入れることです。そうすることでギャンブルの苦痛や原因が取り除かれ、心と体の健康を保つことができるはずです。そして、ひとつのエンターテインメントとして、安心してギャンブルを長く楽しむことができるでしょう。

question よくある質問

日本の人口の何パーセントがギャンブル依存症に罹患していますか?

令和2年度の調査では、ギャンブル依存症の疑いがある人は、人口全体の2.2%(男性3.7%、女性0.7%)となっています。

日本のギャンブル依存症になりやすさでは、男女に違いはありますか?

依存症の疑いのある人は、男性は3.7%、女性は0.7%となっています。女性よりも男性の割合が高いという結果になっています。

日本では、どのギャンブルが依存症になりやすいですか?

最も多いのは、パチンコ(男女合計:38.7%)です。男性34.6%、女性60.0%の結果です。

2番目はパチスロ(男女合計:32.3%)で、男性は35.4%、女性は16.0%です。3番目の競馬(男女合計:11.0%)は、男性は12.3%、女性は4.0%という結果がでています。

そのほかのギャンブルにおいては、宝くじ(ロト・ナンバーズ等も含む)、その他と続きます。

(その他:競輪、競艇、オートレース、サッカーくじ、証券の信用取引、先物取引市場への投資、FX、公営ギャンブルを除くインターネットを使ったギャンブル、海外のカジノ)

日本でギャンブル依存症になりやすい年齢層はありますか?

「娯楽と健康に関する調査(回答者の性別・年齢)」では、日本でギャンブル依存症になりやすい年齢層は、男性は60歳~69歳、女性は40歳~49歳となっています。

当記事に記載されている統計データの出典元: